人材開発支援助成金の賢明な活用術

企業が従業員の能力開発に投資することは、生産性の向上や人材の定着化など、多くのメリットをもたらします。
しかし、研修費用の確保が課題となることも多くあります。
そこで注目されるのが、国の「人材開発支援助成金」制度です。本制度を賢明に活用することで、質の高い人材育成が可能になります。

人材開発支援助成金

【制度の概要】
労働者に対する職業訓練や、自己啓発支援、キャリアコンサルティングなどの人材開発施策にかかる経費の一部が助成されます。対象となるのはOFF-JTの座学研修やOJTなど、様々な訓練形態です。

【主な助成コース】
・特定訓練コース…生産性向上訓練、若年人材育成訓練など
・一般訓練コース…OFF-JTによる職業訓練(20時間以上)
・特別育成訓練コース…有期雇用者の正社員転換や処遇改善を目的とした訓練

【ポイント1:戦略的な訓練計画】
訓練の目的や対象者、スケジュールなどを明確化した上で、適切なコースを選択することが重要です。企業の人材育成ビジョンと連動させ、中長期的な視点で効果的な訓練を企画しましょう。
【ポイント2:生産性向上を意識】
生産性が一定以上向上していれば、助成率が増額される制度があります。付加価値向上につながる実践的な訓練を取り入れ、企業の生産性アップを図りましょう。
【ポイント3:書類作成と申請】
訓練実施計画や経費の記録、支給申請書の作成など、適切な書類の準備が求められます。担当者を置き、関係書類を確実に整備する必要があります。
人材開発支援助成金は、受給要件や申請手続きが複雑な面もありますが、戦略的に活用することで大きな恩恵を受けられる制度です。社内体制を整え、真に効果的な人材育成に取り組みましょう。

特定訓練コースの詳細

特定訓練コースは、以下の6つの訓練が対象となっています。

①労働生産性向上訓練
②若年人材育成訓練
③熟練技能育成・承継訓練
④認定実習併用職業訓練
⑤技術労働者育成支援訓練
⑥教育訓練休暇付与訓練

特に注目されるのが①の労働生産性向上訓練と④の認定実習併用職業訓練です。
【労働生産性向上訓練】
公的教育訓練機関で10時間以上実施される訓練が対象です。生産性向上につながる実践的なカリキュラムが用意されており、企業の付加価値アップが期待できます。生産性が一定以上向上していれば、助成率がさらに増額されます。

【認定実習併用職業訓練】
厚生労働省から認定を受けた実践的な訓練です。OJTとOFF-JTを効果的に組み合わせ、実務に直結する職業能力の習得を目指します。訓練期間は6カ月~2年と長期にわたります。
いずれの訓練も、高い専門性と質の高さが求められます。経費助成の上限額は50万円(中小企業)と手厚く、従業員の実践力向上に大きく貢献します。
賃金助成も最大960円/時間(中小企業)と優遇され、企業の負担軽減にもつながります。OJT実施時にも追加の助成があるなど、メリットが多岐にわたります。
企業の人材育成ニーズに合わせて、適切な訓練コースを選択することが肝心です。申請手続きなどを確実に行えば、大きな助成金を受給できる可能性が高まります。

一般訓練コースの詳細

一般訓練コースは、特定訓練コース以外の職業に関連した知識・技術を習得するための訓練が対象となります。OFF-JTの座学研修形式で実施され、20時間以上が必須要件です。
定期的なキャリアコンサルティングの実施も就業規則等で定める必要があります。労働者の適性や希望を踏まえたキャリア形成支援と併せて、計画的な職業訓練を行うことが求められます。

【助成額と上限】
助成額は以下の通りです(中小企業の場合)。
・経費助成率:45%(生産性要件を満たせば60%)
・賃金助成額:480円/時間(生産性要件を満たせば960円)
経費助成の上限額は以下の通りです(中小企業)。
・20時間以上100時間未満:7万円
・100時間以上200時間未満:15万円
・200時間以上:20万円
生産性要件を満たせば、助成率・助成額が増額されるメリットがあります。

【適用できる訓練例】
・社内での階層別研修
・外部の専門教育機関での講座
・eラーニングなどの自己学習支援
・資格取得のための講座 等
汎用性の高い一般的な職業能力開発訓練が対象となり、企業の人材育成ニーズに合わせて柔軟に活用できます。申請手続きは特定訓練コースと同様ですが、対象要件が緩やかなのが特徴です。
人材開発の土台作りとしても有効活用できる一般訓練コース。これを起点に、より実践的・専門的な訓練へとステップアップしていくことをおすすめします。

特別育成訓練コースの詳細

有期契約労働者などの非正規雇用者を対象に、正社員への転換や処遇改善を図るための訓練を実施した場合に助成が受けられるコースです。非正規雇用者の活躍の場を広げ、雇用の安定化を後押しすることが目的です。
対象訓練は以下の3つです。

①一般職業訓練
OFF-JTによる20時間以上の座学訓練。育児休業中の訓練や中長期キャリア形成訓練なども含まれます。
②有期実習型訓練
OFF-JTとOJTを2か月以上組み合わせた実践的訓練(425時間以上)。ジョブカードを活用します。
③中小企業等担い手育成訓練
業界団体と連携した最長3年の実践訓練。製造業や建設業などで実施されます。

【手厚い助成内容】
この特別育成訓練コースの大きな特徴は、助成内容が非常に手厚いことです。
正社員転換した場合は、経費助成率が最大100%、賃金助成は960円/時間(中小企業)と、訓練にかかるコストのほとんどが助成されます。正社員化しない場合でも経費75%、賃金600円/時間が助成対象となります。
また、有期実習型訓練ではOJT時に10万円/人が追加助成されるなど、メリットが多岐にわたります。長期的な視点から人材育成に取り組める制度設計となっています。
企業が直面する人材確保の課題を解決するための有力な手段として、本コースを積極的に活用することをおすすめします。非正規雇用の活用と併せて、戦略的な人材育成を実現できるでしょう。

助成金や補助金はプロに相談

以上のように助成金や補助金について、どのように進めていけば良いのかは煩雑でなかな時間がかかります。

本業に集中しつつ資金調達を行うには資金調達のプロに相談することも是非検討ください。

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