助成金・補助金を考える際の会計処理と税務上の注意点

今年、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業や個人事業主を支援するために、様々な補助金・補助金制度が設けられています。処理と税務上の取り扱いを留意する必要があります。

1:助成金・補助金の種類

助成金・補助金には、雇用関連の助成金、事業支援のための補助金など、様々な種類があります。
例えば、雇用調整助成金、持続化補助金、事業再建設補助金などが代表的です。主な助成金・補助金は以下のようなものがあります。

<雇用関連の助成金>
・キャリアアップ助成金
・雇用調整助成金
・人材開発支援助成金
・人材確保等支援助成金
・地域雇用開発助成金
・トライアル雇用助成金

これらは、企業が従業員の雇用を維持・拡大したり、従業員の育成・キャリアを支援したりする際に得られる助成金です。

<事業支援のための補助金>
・再事業構築補助金
・ものづくり補助金
・IT導入補助金
・小規模事業者持続化補助金

これらは、事業者が新しいビジネスモデルへの変革や生産性向上、デジタル化などを行う際に活用できる補助金です。

2:会計処理の方法

助成金・補助金は、原則として「譲渡決定通知」が行われた日の利子事業年度に「雑収入」として収益分配します。その経費が発生した事業年度に収益が出るケースもあります。

【収益計上の留意例】 (現金受領時) 現金口座 ○○円 / 雑収入 ○○円

・収益認識の基準時点
原則として、助成金・補助金の収益は、「交付決定通知」を受けた日の属する事業年度に認識します。この時点で収益の実現が確定したと見なされるためです。
・現金主義と発生主義の違い
上記は発生主義による会計処理の例ですが、現金主義による処理も可能です。
現金主義の場合は、助成金・補助金を実際に現金で受領した時点で収益を計上します。
・雑収入の計上
助成金・補助金は、本業外の収入に該当するため、通常は「雑収入」の勘定科目で処理されます。ただし、事業活動に密接に関連する補助金については、「売上高」や「事業収入」として計上することもあります。
・対応する経費の収益計上時期
一方で、「その経費が発生した事業年度に収益が出るケースもあります」とあるように、助成金・補助金の対象となる経費の発生時期と収益計上のタイミングを合わせる必要が生じる場合があります。
例えば、設備投資に係る補助金を受領した場合、設備の取得時に収益を計上するなどです。
・現金の会計処理
【収益計上の留意例】の部分は、現金主義での処理例を示しています。
助成金・補助金を現金で受領した際は、現金勘定の借方に受領額を記帳し、雑収入の貸方に同額を計上します。

このように、助成金・補助金の会計処理は、収益認識の基準時点、現金主義や発生主義の選択、補助対象の経費との対応など、様々な要素を考慮する必要があります。
適切な処理を行うためには、制度の内容や会計方針を十分に吟味することが重要です。

3:法人税

・所得税の取り扱い助成金・補助金は、原則として法人税または所得税の交付対象となります。

4:消費税の取り扱い助成金

・補助金の受領自体には消費税がかかりませんが、経費を補填する目的の助成金を受けた場合は、消費税分を助成元に還付する必要がある場合が返還額は一定の計算式により算出されます。

還付額の具体的な計算方法は以下の通りです。
還付額 = 助成金総額 × 10/110 (消費税率10%の場合)
例えば、100万円の助成金を受けた場合:
還付額 = 1,000,000円 × 10/110 = 90,909円
消費税の課税事業者は、受領した助成金に含まれる消費税相当額を助成元に返還し、実質的に助成金の全額を収益として計上することになります。
助成金を受領する際は、このような消費税の取り扱いにも注意が必要です。

5:圧縮記帳による税負担の繰延べ

助成金・補助金により機械設備などの固定資産を取得した場合、「圧縮記帳」により法人税・所得税の支払を一時的に延べることができます。
取得した固定資産の簿価から助成金額を直接減額する「直接減額方式」などの会計処理を行います。

圧縮記帳による効果は、助成金などを受けて取得した固定資産の簿価を助成金相当額で直接減額することで、将来の減価償却費の負担を軽減し、課税を繰り延べることができる点にあります。
具体的には、例えば1,000万円の機械を購入し、そのうち500万円が助成金で賄われた場合を考えます。
通常の場合:
機械の取得価額1,000万円を10年で均等償却すると、毎年100万円の減価償却費が計上されます。
圧縮記帳の場合:
助成金500万円を機械の取得価額から直接減額し、簿価を500万円とします。この500万円を10年で均等償却すると、毎年50万円の減価償却費で済みます。
つまり、通常の場合に比べ、圧縮記帳により最初の10年間は毎年50万円の減価償却費の負担が軽減されます。
これにより、課税所得が最小化され、実質的に法人税等の納税が一時的に繰り延べられる効果がもたらされるのです。

助成金・補助金を適切に活用するためには、会計処理と税務上の扱いをよく考えておくことが重要です。

助成金や補助金はプロに相談

以上のように助成金や補助金について、どのように進めていけば良いのかは煩雑でなかな時間がかかります。

本業に集中しつつ資金調達を行うには資金調達のプロに相談することも是非検討ください。

関連記事

  1. 事業計画作成からデット資金調達まで、全てをプロに学ぶ実践ガイド

  2. 事業計画策定のメリットと策定方法のポイント

  3. 事業者が活用したい『補助金』とは?メリット・デメリットをまとめて紹介

  4. 助成金申請失敗!~不合格になった具体的な事例と対策~

  5. 2024年6月から定額減税がスタート!~低所得者ほど手取りアップの効果大~

  6. エクイティ調達とデット調達の全解説~メリット・デメリットを徹底比較~

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

貴社の活用できる助成金がすぐ分かる
助成金3分診断はこちら
助成金3分診断はこちら